「……そうだけど……何の用?」

 覚えのある顔だったから答えたけれど、今まで話したことは一度もない。

 接点もないのに、どうしてあたしを知っているのか……。


「ちょっと……君があの《かぐや姫》を嫌ってると聞いてね」
「っ⁉」

 にこやかに告げられた言葉に警戒を強める。

 どうして知っているの?
 誰に聞いたの?

 ううん、それよりもそれを知ってあたしに何をするつもりなんだろう。


 今ではあの女の信者は多い。

 そういう奴らにとって、あの女に危害を加えようとした上に未だに嫌っているあたしは良く思われていないだろう。

 この男だってあの女を好ましいと思っているに違いない。

 あの女を嫌っている人なんてあたしくらいしかいないみたいだし、大抵男はたらし込まれてるみたいだから。


「ああ、そんなに警戒しないでくれるか? 悪いようにはしないから」

 でも、目の前の男はあたしに悪感情をまるで抱いていないような笑みを浮かべる。

 まだ疑わしい気はしたけれど、話を聞いてみてもいいかもと思えるくらいには警戒を解いた。


「……何なの?」

「実はね、俺にとってもあの子は邪魔な存在なんだ。どうにかこの学校から追い出したいんだよ」

「……」

 本当なの?

 一度失敗しているから、どうしても疑い警戒してしまう。

 でもそんなあたしの態度も想定内なのか、相手は笑顔を崩さず続ける。