あの瞬間の屈辱は今でも思い出せる。
 それくらい腹立たしい記憶なんだ。


 久保にも腹は立ったけれど、あたしのプライドを踏みにじったあの女の方が憎らしい。

 あんな地味な女にあたしが負ける?
 有り得ない。
 何か男を誘うようなことをしたに決まってる。

 素朴そうに見えて、案外ふしだらなことを平気でしているんじゃないかって。

 だからお似合いの男たちを用意してあげたっていうのに……。


 想定外にあの兄妹はケンカが強かった。

 抵抗どころか次々と男たちを倒していくし、そのうち久保や双子まで来て場は鎮められてしまうし……。

 その結果、あたしの方が停学を食らうなんてことになってしまった。


 しかもあたしが停学処分を受けている間に、あの女が実は生徒会長や二人の総長が探していた《かぐや姫》なんだと判明したらしい。

 初め聞いたときはなんの冗談かと思った。

 あんな極上な男たちが二年も求めていた女があの地味子? 有り得ない。

 なのに、大勢の生徒がいる食堂で披露された姿は確かに《かぐや姫》と言っても差し支えないほどで……。

 納得はしたけれど、同時に憎しみは増した。