真剣な顔が近付いてきて、真っ直ぐ見つめられるのが恥ずかしくなったあたしはそっと瞼を伏せる。

 駆け足になった鼓動の音が大きくなって、耳の奥で直接鳴っているみたいな感覚。

 ドキドキしながら待っていると……。


 チュッ


 リップ音と共に久保くんの唇があたしに触れた。

 ……あたしの額に。


 久保くんの唇と、頬を包んでいた手が離れて行くのと同時にゆっくり瞼を上げる。

 唇にされるかと思っていたから、勘違いが恥ずかしい。

 でも、額へのキスもそれはそれで嬉しかった。

 何より、瞼を上げて見えた久保くんの顔があたし以上に照れている様子だったから……。

「……悪ぃ……今はこれが精一杯だ」

 今の久保くんが出来る最高の愛情表現だったから……。

 胸がきゅうっと締まって、喜びしか湧かなくなった。


 久保くんが触れた感触を守るように片手を額に当てる。

 ああ、もう、本当に……好き。

 そんな気持ちにしかならない。


「十分だよ。……でも、いつかはファーストキス貰ってね?」

 嬉しいけれど、やっぱりそこは憧れだからとお願いする。

「っ! あ、ああ」

 照れながらも頷いてくれた久保くんは、そのまま首の後ろを掻きながら「じゃあ、さ」と遠慮がちに話し出した。