「……どうしたの?」

 聞くけれど、少し視線を逸らされて「帰るか」と歩き出してしまう。


 そのまま会話が途切れて、あたしたちは第二学生寮までの道のりを話もせずにゆったりと歩いた。

 ただ一緒に帰ってるだけ。

 それも悪くはないんだけれど、やっぱりもっと話したいな。


 歩みを進めながら、チラリと久保くんを見る。

 柔らかそうな猫っ毛の金髪は夕日に染められてほんのりオレンジ色。
 何か考え事をしているのか、焦げ茶の目は前方を一点だけ見つめている。


 カッコイイなぁ……。


 自然と思った。

 あたしの周囲にいる男の人は何故かみんなイケメンだから、久保くんだけ顔が良いってわけじゃない。

 でもやっぱり久保くんが一番カッコイイなぁって思ってしまう。

 こういうのが恋の魔法ってやつなのかな?
 それとも恋は盲目?

 どっちにしろあたしがカッコイイと――好きだと思う男の人は久保くんだけなんだ。


 好きな人と一緒に下校。
 こういうシュチュエーションも憧れてた。
 
 これで恋人同士ならもっといいのに。

 そんな願望が湧き上がってくる。

 告白って、待っていた方がいいのかな?
 いっそあたしから――。

 そう思って考え込むように下ろしていた視線を上げてみると。
 
「あ……」


 丁度学生寮についてしまった。