「だからその、押し倒したのも若気の至りっつーかなんつーか……」

「……」

 久保くんの言葉に一瞬キョトンとしてしまう。


 あ、もしかして久保くんは香梨奈さんと一緒にいた事じゃなくて、その後にあたしを押し倒したときのことを思い出してるの?

 それを理解して、目をパチパチさせてしまう。


 あのときのことを思い出していたって言葉で、一番に思い出すのはあたしのことなんだ……。

 それが分かって、モヤモヤしたものが気恥ずかしさに変わった。

 嬉しいような……でもやっぱり恥ずかしいような。

 そんなじれったい気持ちで胸がいっぱいになり、香梨奈さんのことなんて奥に追いやられてしまった。


「とにかく! あんな無理矢理押し倒すようなマネ、もうしねぇよ」

「……うん」

 そうだね。
 今の――あたしが好きになった久保くんは、ちゃんとあたしを大切に扱ってくれてるもん。

 ちゃんと、分かってる。


 温かい気持ちに、自然と笑みがこぼれた。


「だからその……嫌わねぇでくれよ……」

「え?」

 しゅん、とした様子の久保くん。
 フワフワの猫っ毛も少しへたっとなっている様に見える。

 でもどうして嫌うとかって話になるのか分からない。