地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~

「ねえ、さっき久保くんあの子の名前呼んだよね?」

 ……ん?

「うん……いつ知ったんだろう? 昨日は朝いなかったのに」


 一度聞こえてしまった会話は聞き耳を立てるつもりがなくても聞いてしまう。


「しかも女子の名前覚えてるなんて……」

「ね、あの子どんな手を使って気に入られたんだろ。羨ましい」


「……」

 羨ましい?

 だったら代わってほしいんですけど。

 というか、さっきのやり取りを見て羨ましい要素なんてあった?

 髪掴まれて遊ばれただけだよ?


 本気で疑問に思っていると、しのぶが自分の席に戻ってきた。


「あ、おかえりー」

 なんとなくそう口にすると、「う、うん。ただいま……」というぎこちない言葉が返ってくる。

「ん? どうしたの?」

「うん……えーっと……一応確認だけどね」

 あたしの方をまっすぐに見て前置きをしたしのぶは続けた。


「さっき久保くんにちょっかい出されてたの、美来は嫌がってたんだよね?」

「へ? そりゃあ、もちろん」

 何でわざわざそんなことを聞くのか疑問で目をパチパチさせてしまう。

「だよねー、良かった」

 なんて言うものだから、尚更訳が分からない。