「いや、問題があったわけじゃない。先生たちに提出した草案にOKが出たから、役員の皆にも全生徒に告知することを了承してもらいたいとのことだった……」

 聞くと、確かに問題がある様には思えない。

 じゃあどうしてこんな強引にあたしを連れ出したのか……。


「あ、すまない。引っ張って来て……」

 まるで手を掴んでいたのを今気付いたかのようにパッと離される。

「どうしてだろう……? さっき星宮さんが久保といるところを見て、何故かとてもイライラしたんだ……」

「高志くん?」

「すまない、きっと疲れているんだな。連休が終わってからハロウィンパーティーの許可を取ったり草案を作ったりテスト勉強したり……休む暇もなかったから」

 そんなに立て続けだったんだ……。

 っていうか、草案作る前にも働いてたんだね。
 やっぱりあの時のはワーカーズハイだったのかな?


 ……本当に大丈夫かな?

「休んだ方がいいんじゃない?」

 草案に引き続きテスト勉強も1位取れるくらい頑張ったんだ。
 テスト直後も、草案を詰めて先生たちに提出するまでの話し合いに欠かさず参加していた。

 もう休んでもいいんじゃないのかな?

 本気で心配したんだけれど、高志くんは力なく笑って「大丈夫」と言う。

「あと少し、詳しいルールとかを決めて公表してしまえばあとはゆっくり出来るはずだから」

「そう?」

 心配ではあったけれど、本人が大丈夫だというのにもう休めとは言えない。

「でも本当に、気を付けてね?」
「ああ、ありがとう」

 疲労が濃く見えるその笑みに、頑張ってとは嘘でも言えなかった。