「は? どういうことだよ? 協力するって言ってただろう?」

 夜の繁華街。
 その裏路地で、俺は目の前にいる美しい男を睨みつけながら話が違うと問い詰める。

 だが相手――《crime》の総長である高峰銀星は全く悪いと思っていなさそうな態度で「悪いな」と口にした。


「お前の話を聞いたときは面白そうだと思ったし、俺にとっても悪い話じゃねぇと思った……でもな、状況が変わったんだよ」

「状況がって……」

 こっちはこいつらの協力ありきで計画を立てていたんだ。
 急に状況が変わったから下りると言われても困る。


「だってな、お前の計画を実行したらあいつ絶対泣くだろ? 前はちょっとくらい泣いても楽しい方を優先しようかと思ってたが……もう無理だ」

「無理ってどういうことだよ?」

 せめて納得のいく理由を知りたいと思い焦燥(しょうそう)を抑えて問う。

 すると銀星は、皮肉気だった笑みを幾分優しいものに変えて告げた。


「無理なんだよ。俺の女神を泣かせるようなマネ、出来るわけねぇだろうが」

「は? 女神?」

 思ってもいなかった単語が出てきて本気で戸惑う。

 女神って何だ?
 何かの例えか?

「あああ! いや! なんでもない! それは気にすんな!」

 俺が深読みしようとしたところに、銀星の連れ――《crime》の副総長でもある西木戸連が間に入った。