「え? マジで?」
「キスだけで、泣く?」

 自分達がどれだけ酷いことをしようとしているのか分かっていなかったらしい二人は、俺の言葉で一気に顔面蒼白になった。


「クソッ!」

 俺はそんなヨシとノブを放って露天風呂の方へと走り出す。

 銀星が露天風呂に向かってどれくらいたったのかは分からない。
 二人に聞けば分かるだろうが、そんな時間も惜しかった。


 銀星、早まるなよ⁉


 一糸まとわぬ姿の女が目の前にいて、あの女好きの銀星が何もしないでいられるとは思えない。
 裸を見ても反応しないのなんて、妹みたいに思っている遥華くらいだって自分でも言っていたからな。

 遥華も一緒にいるとはいえ、本気になった銀星を止めることは出来ないだろう。


 間に合ってくれ!

 美来ちゃんの泣いた顔なんて見たくなくて、願いながら急いだ。


 でも、露天風呂につく前に小柄な二人の姿を見つける。

「遥華、美来ちゃん⁉」

 思わず呼び掛けると、顔を上げた遥華が詰め寄ってくる。

「連? ちょっと聞いてよ! 銀星が露天風呂に入ってきたんだけど! ホント信じられない!」

 怒りをあらわにしているけれど悲壮感などは感じない。
 ただ覗かれて怒っているって様子だった。