まあでも、学生寮に入ってる美来ちゃんを引き留め続けることは出来ないし仕方ないかと諦める。

 だからせめて、明日の朝の最後の食事も美味しいと言ってもらえるように仕込みを頑張ったんだ。

 あとは明日うっかり寝坊しないように早く風呂入って寝ないとな。


 なんて、明日の美来ちゃんの笑顔を楽しみに廊下を歩いていると何やら怪しい雰囲気の二人組を見つけた。

 ヨシとノブが何やら廊下の隅で縮こまってヒソヒソ話している。

 不審に思いながら近づくと、とんでもない話が聞こえてきた。


「なあ、ヨシ。本当に大丈夫か? ハルの風呂の札外しちまって」
「まあ、ハルの仕返しは怖ぇけどな。でもそうしねぇと若が中に入らねぇだろ?」

 ……風呂の札?
 遥華のって……まさかあの露天風呂の札のことか?

「そりゃ、若が美来ちゃんと一緒に風呂にでも入って色々既成事実作れば未来の姐さんになってくれるんじゃねぇかって言ったのは俺だけどよぉ……」
「今更怖気づくんじゃねぇよ! 若だって美来ちゃんと風呂入れたら嬉しいに決まってんだろ⁉ あとは若の手腕に賭けるだけだ!」

「……は? 今なんつった?」

 流石に聞き流すことのできない話に俺は怒りを込めながら低い声を掛けた。