瞼を()せて歌いきって、息を整えてから目を開く。

 遥華の方を見下ろすと目じりに涙を浮かべて聞き入ってくれていたのが分かった。

 歌が遥華の心にも届いたことを知って良かったと安堵し、あたしは大きく息を吸いながら顔を上げて周囲を見回す。


 そして、息を止めた。


「……み、く?」


 そこには、上半身裸の状態の銀星さんが立ってあたしをジッと見ていたから。

 目を見開いて、数秒後。


「きゃあぁ⁉」

 あたしは悲鳴を上げて隠れるように湯舟に沈んだ。

「え? どうしたの⁉ って、銀星⁉」

 あたしの様子を見て驚いた遥華も、銀星さんの姿を見つけて更に驚く。
 そしてすぐあたしを守るように間に入ってくれた。

「ちょっと銀星! あんたあの札見てなかったの⁉ それとも見て分かってて入ってきたの⁉」

 銀星さんを睨みつけて非難する遥華が頼もしい。

 あたしはいくら大判のバスタオルをしっかり巻いていても、お風呂に入っているところを異性に見られたことがショックで身を隠すのが精一杯だったから。


「ちょっと銀星⁉ 聞いてるの⁉」

 でも、銀星さんはピクリとも動かないどころか言葉を発することもない。

 流石にあたしもおかしいなって思って、改めて銀星さんを見た。