ワクワクとした顔に見上げられて、さて何を歌おうかと考える。

 遥華はどういうタイプの歌が好きなんだろう?
 大抵の女子は恋歌だけど……。

 そこまで考えてふと久保くんの顔が頭に浮かんだ。

 今のあたしは恋となったらすぐに彼の顔が浮かんでくるくらい恋愛脳になっちゃってるみたいだ。


 きっと、いつもは一つ部屋を挟んで会おうと思えば会える場所に久保くんがいるから、すぐには会えない距離にいるのが寂しいんだと思う。

 そんな風に自分を分析して、クスッと笑った。

 まさかあたしがこんな風に誰か一人を思うようになるとは思わなかったよ。


 久保くんに会いたいな……。


 昨日別れてから二日も経っていないのに、そんな風に思う。

 そうしたら、自然と唇が歌を紡いでいった。


 遠く離れた恋人を想う遠距離恋愛の歌。

 恋人を想って優しく紡がれる旋律から、会えないことから来る不安、忘れられていないかという恐怖。

 それが、恋人からの電話一つで明るく優しいものへと戻る。

 最後は未来を約束する言葉――「またね」で終わる歌。


 特定の人を思い浮かべながら歌ったからかな?

 いつもより感情を乗せることが出来た気がする。