「……」

 うん、遥華のさっきの話とこの札を見て覗きに来ようとする人はまずいないね。

 するとしても覚悟が必要だろう。

 そう思った。


「さ、親父さん自慢の露天風呂だよ! どう?」

「わぁ……凄いね」

 二人で大判のバスタオルを体に巻き付けながら脱衣所を出ると、湯気を揺らす立派な岩風呂が見えた。

 ライトアップもされていて、本当にどこかの旅館に来ているように錯覚してしまう。


 これは確かに自慢したくなるよ。

 そんな感想を抱きながら、まずはかけ湯をして足からゆっくり入った。


「ここから少し離れた街がちょっとした温泉郷になってて、そっちから引いてるんだ」

「へぇー……柔らかくていいお湯だね」

「疲労回復はもちろん、美人の湯って言われてるから……美来に絶対入ってほしかったんだ」

「そうなんだ……ありがとう」

 丁度いい温度の温泉に浸かってほっこり一息ついていると、話題は今日の《crime》でのことになる。


「やっぱり美来歌上手いよねー。あのまま美来のコンサートになっても良かったくらいだよ」

「流石にそこまで連続では歌えないよ。それにあたしはみんなで楽しく歌う方が好きだし」

 あたしの歌を絶賛してくる遥華に照れつつ、コンサートは遠慮しておく。