「今度の土日にでもカラオケ行かない? ……その、生で歌声聞きたかったんだ」

「もちろんいいよ? しのぶの為だけに歌ってあげる」


 っかーーー!

 本当に甘酸っぱい!

 っていうか、いつ聞いても奏の口説き方は鳥肌が立つ。


 彼女側を思って聞いているとただただ甘酸っぱいのに、それを言っているのが実の双子の兄だと思うと寒気しかしない。


 でももしこの二人が付き合ってなくても、両想いっぽいのは確実だ。

 付き合うのも時間の問題だろう。


 まあ、そこはあたしが口出すことじゃないし、とライスに口をつけたときだった。


「本当に!? ありがとう奏! 美来もいいよね?」

『へ?』

 しのぶの言葉にあたしと奏の声が重なった。

 多分思っていることも一緒だろう。


 奏と二人のデートじゃないの!?


「えっと……あたしも一緒で良いの?」

 確認のために聞いてみる。

「もちろん! ってか最初からそのつもりで話してたんだけど?」

 逆に不思議そうに言われて、デートに誘ってたわけじゃないの? なんて聞けなかった。


 チラリと奏を見ると、こっちは少し落ち込んでいるみたいだ。

 口元は笑みの形を作っているけれど、あたしには分かる。

 眼鏡の奥の目には明らかな落胆があるってことが。


 奏はハッキリとは口にしていないけれど、確実にしのぶのこと好きみたいだし。

 しのぶも奏のことちゃんと好きみたいに見えるんだけどな……?


 無自覚ってやつかも知れない。

 これは相当手強いぞ。


 がんばれ奏~。


 あたしは心の中でだけ応援しつつ美味しいハンバーグ定食を完食したのだった。