「役に立てたみたいで良かったよ。……それと、あたしのことはしのぶって呼んでくれる? 美来達のことも名前で呼びたいから」

「ああ、分かった。しのぶって呼ぶな」

「うん、お願いね。奏くん」

「……」

 一通り呼び方について二人が話していたけれど、最後に奏が少し黙った。


「俺はしのぶって呼び捨てにしたのに、何でしのぶは俺のことくん付けなんだ?」

「え?」

「美来のことは呼び捨ててるよな?」

「それは……やっぱり、男の子のことをいきなり呼び捨ては……」

 恥ずかしがっているのか、しのぶは視線を泳がせながら話していた。


「俺はしのぶって呼び捨てたけど?」

「っ! でも……」

「奏って呼んで? しのぶ」

「っ! ……か、なで……」

「うん。良く出来ました」



「……」

 そんな二人のやり取りをあたしは黙々とハンバーグを口にしながら聞いていた。


 なんか、甘酸っぱい。


 なんで食事時に兄のイチャラブを見せつけられなきゃいけないのか……。

 てか、本当にこれ付き合ってないの?

 いや、付き合ってるよね?


 後でちゃんと問い質しておかなきゃ。


「えっと、それとさ……奏く……奏」

「うん?」