すると、この広めの玄関に底冷えするほどの低い声が響く。

「……ヨシさん?……ノブさん?」

『⁉』

 その声が聞こえた途端大の男二人はビクリと震えて動きを止める。

 見ると、遥華が絶対怒っているというのが分かるほどの冷気を漂わせた笑みを浮かべていた。

「あんた達、いい加減にしなさいよ?」

「ひぃっ!」
「は、はいぃ!」

 遥華の本気の怒りに、ヨシさんとノブさんはビシッと直立不動になる。

 筋肉質の大柄な大人の男二人が、一人の女子高生を怖がっている姿は中々にシュールだった。


「ごめんね美来。こいつら脳筋だからさ」

 見事なほどに冷気を消し去った遥華があたしに申し訳なさそうに説明する。

「脳筋……」

「うん。つまり馬鹿なの」

「……」

 ハッキリ言っちゃったよ……。


「悪い人達じゃないんだけど、たまに面倒臭いんだよね。早とちりや勘違いして暴走するし……」

「……そっか」

 なんて返せばいいのか分からなくてそれしか言えない。

 そんなあたしに、遥華は眉尻を下げて申し訳なさそうに提案をする。


「でさ、ここにいる大人の男って親父さん以外だとみんなこんな馬鹿ばっかりなんだ」

「そ、そうなの?」