「おお、悪い」
 ヨシさんと呼ばれた黒髪の男が遥華の叱責に申し訳なさそうにして少し離れた。

「スマンスマン」
 ノブさんと呼ばれたスキンヘッドの男の方も倣うように下がる。

「ごめんね美来。この人達ちょっと態度が乱暴で……」

「ううん、大丈夫だから」

 手のひらを向けてジェスチャー付きで気にしていないことを伝える。


 確かに粗野な感じはするけれど、遥華の叱責で普通に謝っていたもん。
 悪い人たちってわけじゃないみたいだから。

 でも、一つだけ気になることがある。


「それよりもさ、さっきその……ノブさん? が言っていた《未来の姉御》って、何?」

 つい、最後の方の声音が低くなってしまう。

 だって、その言葉を単純に考えるとさ……姉御って多分組長の奥さんとかのことだよね?

 そこに《未来の》なんてつくってことは、今の組長じゃなくて未来の組長。

 ……多分、銀星さんのこと。


 つまり何? この家の人達の中ではあたしってすでに銀星さんの女ってことになってるとか?

 ちょっと、頬が引きつった。


 でも遥華は慌てて訂正する。

「あ、違うの! 美来が来るって伝えたときに銀星が『俺が今狙ってる女だ』なんて言うから、この人達が早とちりしちゃってるだけだから!」