小判型のハンバーグにナイフを入れ、フォークで口に運ぶ。

 手捏(てご)ねならではの、出来合いには出せない美味しさが口の中に広がった。


「お、美味しいぃ!」

 学生寮の食事とは思えないほどの美味しさに、あたしは思わず感嘆の声を漏らす。

 そんな喜びを奏が一言で突き落とした。

「あんまり騒ぐなよ? 昼の食堂みたいになりたいのか?」

「うっ……」


 双子なのに、やっぱり奏が兄だからなのか落ち着いてることが多い気がする。

 本来ならここにいるはずのないあたしと奏。
 だから悪目立ちするわけにはいかないので、あたしは大人しくすることにした。


「で、でも本当に良かったよね? 第二学生寮の人でもここの食堂使えて」

 昼と同じように一緒のテーブルで、一緒のメニューを食べているしのぶが戸惑いつつもフォローしてくれる。


 奏としのぶに合流したころにはすっかり日も落ちて暗くなっていた。

 今から第二学生寮に帰って買い出しをして、となると夕飯がいつになるか分からない。

 仕方ないので今日はコンビニ弁当にしようかと話していたところ、しのぶがもしかしたら第一学生寮の方で夕飯は食べられるかも、という言葉があった。


 出来る限り出費を抑えたいあたし達は、とりあえず聞くだけ聞いてみようと第一学生寮の方へついて行ってみたんだけど……。