「泊めてくれるところがないのは困るな……」

「うん……どうしても見つからなかったらあたしだけでも家に帰るしか――」

「ダメだ!」

 顎に指を置いて考えていた奏が、あたしの言葉に大きく反応する。
 確かに奏のストーカーにはあたしも会ったら何かされそうな気はするけど……そこまで強く止められるとは思わなかった。

 目を丸く開いて驚くあたしにハッとして、奏は取り繕うようにコホンと咳払いする。


「お前だってあいつに会ったら何言われるか分からないだろ? とにかく、帰るのだけはダメだ」

「う、うん……」

 珍しく感情を荒立たせた姿を見せる奏に戸惑いつつも、あたし自身例のストーカーに会いたいわけじゃないから了承の返事をした。


 そんなやり取りをしている間にメッセージを送った数人から返事が来ていたので、チェックしていく。

「すみれ先輩も泊まりで出かけるのかぁ……」

 みんな何かしら用事があったり事情があったりで、断りと謝罪の言葉が続く。

 あたしだけじゃなく奏も久保くんも困り顔になって来て、本当に別の方法を考えなきゃと思ったとき。


「あ! 一人泊っても良いよだって!」

 やっと見つけたOKの返事に、あたしは喜々として二人に遥華のメッセージを見せたのだった。