「おい久保、起きてるか?」

 インターホンを押して声を掛ける奏。
 すぐにドアを開けた久保くんは起きたばかりだったのか、寝ぐせをつけたままだった。

「おはよう、久保くん」
 思いがけず朝から会えたことが嬉しくて、笑顔で挨拶する。

「お、おう。……はよ」
 久保くんはあたしもいるとは思わなかったのか少し驚いていたけれど、戸惑いがちに挨拶を返してくれる。


 そんなあたし達の空間をぶった斬るように奏は早々に本題を口にした。

「はい、おはよう。おい久保、こっちの部屋の水出なくなったんだけどお前の部屋は出るか?」

「あ? いや、俺も今起きて水飲もうとしたとこだったんだけどよ。出なかった」

「そっちもか……もしかしてこの寮全体で断水してんのか?」

 久保くんの返答にグッと眉間にしわを寄せた奏は独り言のように呟く。


 そうしている間に、他の部屋の寮生たちも部屋から出てきて「どうだ?」「そっちもか?」などと話し始める声が聞こえてきた。

 その様子に奏の呟きの通り、寮全体が断水してるんだって知った。


 あたしたちはそんな他の寮生たちと共に何があったのか聞くために寮母さんの部屋へ向かったんだけれど……。

「もう、あなた達ちょっと待ってなさい!」

 出てきた寮母さんは丁度電話をしていたのか、一先ず押しかけて来た生徒たちを黙らせるため叫んでいた。