でもかなちゃんって……まあ、あの顔とそっくりならそう呼びたくもなるか……?
「ははは。彼女、変に気に入られちゃったみたいだね。高志、あの子があまりひどい目に遭わない様に少し様子を見ておいてくれないか?」
幹人たちのやり取りを見ていた千隼が自分の後ろの騎士野郎に向かって言った。
高志と呼ばれた騎士野郎は、あまり表情を変えずに「分かりました」とだけ答える。
この鉄面皮が。
表情が硬すぎて何を考えているのか良く分からない野郎だ。
まあ、とにかくあの美来とかいう地味女のことは二年の連中で様子を見ることになりそうだ。
「じゃあ、転入生の子は二年の連中が様子を見るってことでいいか?」
俺の思ったことを孝紀が口にして話をまとめる。
でもその瞬間、この部屋の中にいる全員が驚き孝紀を見た。
そして怜王が最初に口を開く。
「……稲垣、お前いたのか……?」
「ごめん、気付かなかったよ」
困ったように笑いながら千隼も続く。
俺も心の中でだけ謝っておいた。
連れてきたのは分かっていたのに、少し本気で忘れかけていたから……。
「あ、ははは……。いいよ、いつものことだし」
孝紀は遠い目をしながら乾いた笑いをこぼしていた。