しのぶの言葉にそうだったら良いな、と思った。
 今でさえ全部食べられないのが申し訳ないって思っていたから。

 その上差し入れを止めて欲しいなんて言えない。
 あたしが食べることでくれた子達が喜んでくれるって言うなら尚更。


「ほらほら、そんな顔しないの」

 香がミニパイの袋を取ってそれから一つつまみながら言う。

「あの子たちだってそういう申し訳ない顔をさせたくて作ってるわけじゃないでしょ? 悩むのは相談するときにしなって」

 そしてあーんされてミニパイも食べる。

 レモンパイだったみたいで、サクサクのパイ生地の中に爽やかなレモンの香りとクリームの甘さが広がる。
 やっぱり幸せー……。

 うん、そうだね。
 色々考えるのは後にしよう。


 そうして一口食べては他のみんなに食べてもらうという事をしていると、始業時間が近くなってきたのかいつもギリギリに来る久保くんが教室に入って来た。

「あっおはよう」
「……はよ」

 挨拶を返しては、耳を赤くしてフイッと視線を逸らす久保くんのいつもの挨拶。
 そのまま自分の席に突っ伏して寝てしまうのもいつものこと。

 でもちょっとだけいつもと違うように見える。