地元にいるときはある程度は諦めていたけど、今は駄目だ。

 何としてでも消しきらないと……。
 じゃないと、あいつらに居場所が見つかってしまう。

 美来を狙ってる地元の不良。

 ある意味、美来を連れて転校したのはあいつらから逃げるという意味もあったから。


「……はぁ」

 でも、やっぱりこういう地道な作業は骨が折れる。
 舌打ちくらいしたくなるし、ため息もつきたくなる。


 ひと段落した俺はチラリと部屋の隅を見た。

 何を思ったのか、珍しく夜俺の部屋を訪ねて来た美来は俺が作業しているのをいいことに部屋の隅でボーッとしている。


 こういうときの美来は、自分で答えが出ているのに背中を押してもらいたくて相談に来ているんだ。

 で、背中を押してもらいたいだけっていうわがままだからちょっと申し訳なくなって黙り込む。

 妹のことだ、分からないわけがない。


 作業もひと段落したし、そろそろ話しかけてみるかと思い立ったとき――。

「ねぇ、奏……あたし、恋してもいいのかなぁ?」

 美来がポツリと弱音を零した。

 なんの相談かと思ったけど、そういう話か……。


「……良いに決まってるだろ?」

 恋することに臆病な妹に、俺はいつもと同じ答えを口にする。

 そして今回はもう一言付け加えた。