「勇人はそうかも知れねぇけど、俺は違うからな?」

 左手を取られ、今度は明人くんが話しかけてきた。

 声に左を見ると、可愛い顔に男らしさを垣間見せる笑みを浮かべている。

「俺は相手が勇人だとしても諦めねぇ。諦められねぇって気づいた。だからホントに覚悟しろよな、美来」

「え……なに、を……?」

 聞き返さない方がいい気がしたけれど、多分あたしが聞き返さなくても同じことを言われたと思う。

 取られた両手を持ち上げられ、指先に柔らかいものが触れた。

「っちょ⁉」

『俺たちに愛される覚悟だよ』

 揃う声にあたしは金魚のように口をはくはくさせる。

 もはや本当に何を言えばいいのか……。


 左右を見て、どちらも引き下がりそうにないってことだけは分かった。

 困り果てて正面を見ると、今度は目の前にある如月さんの表情にビクッと思わず震えた。

 これは、明らかに怒っている……。


「お前ら……よくも俺の目の前でそんな真似が出来るな?」

 底冷えするような眼差しといつにも増して冷たい声音。

 そんな彼にいつもだったら怯える双子だけれど……。


「いくら如月さんでも美来のことだけは諦められないっすから」
「そうですよ。今俺、明人以外は諦められないって言ったの聞いてましたよね?」

 怯えなんて欠片も見せずに挑戦的な目で言い返す二人。