「美来、お前もっとこっち近づけよ」

 と、八神さんに椅子を移動されて久保くんの椅子から離されてしまった。

 そうして離れると尚更話しかけづらくなるし、目を合わせようとしてもこっちを全然見てくれないし……。


 寂しい気持ちがモヤモヤになって、段々イライラしてきた。

 結果。

「……美来、お前今日は一段と食いっぷりが良いな?」

 隣の八神さんが軽く驚くくらいのやけ食いをした。


「……今日は、こうやって食べたい気分なんです!」

 答えながらも次のスープに手を伸ばす。

 こういう食べ方は食べ物にも作ってくれた人にも悪いからあまりしたくはないんだけれど、今ばかりはやけ食いでもしないとやっていられなかった。


「じゃあ、これも食うか?」

 差し出されたのは八神さんが食べていたピザの一切れ。

「……あーんとかしませんよ?」

「あ、ああ」

 それを狙っていたのか、残念そうな顔をした八神さんだったけれど、ピザはちゃんとくれたのでやっぱり悪い人ではないんだよなぁとちょっと心が落ち着いた。

「……ありがとうございます」

 だからそのことには笑顔でお礼を言って、ピザはちゃんと味わって頂く。