第二学生寮に帰っても、久保くんとは会えなかった。

 あたしの方から訪ねるのも迷惑になるかもと思って部屋は訪ねることが出来なかったから。

 翌日は会えるし、そのときの様子で対応を決めよう。

 そう思ったんだけど――。


「あ、久保くん。おはよう」

「っ!……はよ……」

 教室でやっと会えて、挨拶はいつも通り返してくれたんだけど……。


 すぐに視線を逸らされて机に突っ伏していつものように寝てしまった。

 よくよく見ると耳が赤かったから、寝たふりなのかもしれないけれど。


 でも、そういう体勢に入られたら無理に話をすることも出来なくて……。

 結局、教室でもまともに話をすることが出来なかった。


 前に看病してもらった後から目が合ったりすると逸らされたり、身体が近づきそうになると避けられたりしていた。

 でも最近は少し落ち着いて、結構普通に話したりは出来るようになっていたんだけれど……。


 これじゃあ看病後の頃に戻っちゃったみたいだよ。


 久保くんへの気持ちを自覚しかけている状態だから、今の彼との距離が寂しかった。


 でも、食堂でなら話せるかな?

 今日は《月帝》のテーブルで食べる日だし、少しくらいは話すチャンスがあるかも。


 そう思っていたあたしは愚かだったのか……。