「それより、ちゃんと病院行ったの? ケガの具合はどう?」

「え? ああ……」

 話題を変えたあたしに視線を戻し、さっきよりは落ち着いた態度で答えてくれる。


「とりあえず傷は塞がったから、また開くような無茶だけはするなって注意されたくれぇだな」

 あとは処方された傷薬を塗っていればいいんだそうだ。

「そっか、良かった」

 心からホッとして笑顔を浮かべると、久保くんは「うっ」と呻いて胸を押さえる。


「久保くん? どうしたの?」

「いや、だからそういう表情……あー、いいや。なんでもねぇ」

 そう言うと彼は細く長く息を吐いて自分を落ち着かせていた。


「まあ、何もなかったならいいや。疲れてんだろ? もう部屋入れよ」

「え? うん。じゃあ……おやすみ」

 何となくまだ話したい気持ちもあったけれど、疲れているのは確かだし別れの挨拶をした。

 すると久保くんは優しい笑みを浮かべて「おやすみ」と返してくれる。


 トクリ、と。
 その笑顔に、わずかに心が反応した気がした……。