「遅い」

 端的に一言で言い放った如月さんが待っていたのは、西校舎と東校舎をつなぐ渡り廊下だ。

「すみません。ちょっと面白いことしてたんで」

 突き刺すような如月さんの視線をものともせずに、明人くんがニコニコ笑顔で返した。


 すると刺すような視線はあたしに向けられる。

 面倒な女だな。

 そう思っているように感じた。


「ひぇっ」

 冷たく凍えそうなその目に、思わず悲鳴を上げそうになる。


 でもまあ、それくらいあたしを邪魔に思っているならさっさといなくなっても問題ないよね!?

 逆に開き直ったあたしは、スタスタと如月さんの前を通り過ぎクルリと三人の方を振り返る。


「如月さん、さっきはぶつかってすみませんでした。そしてついて来させてくれてありがとうございました!」

 勢いに任せて言い放ち、ペコリと頭を下げるとあたしは踵を返して廊下を走って行く。


「また明日ね~」

 と、勇人くんの声が聞こえたけれどそれは無視した。

 今なら聞こえなかったで済ませられると思うし、何より『また明日』なんて言われてもあたしは出来る限り顔を合わせたくはなかったから。


 そうして、彼らの姿が見えないところまで走り息を整えていると、あたしを探してくれていた奏としのぶに会うことが出来た。

 良かったと思うと同時に、奏にしこたま怒られたけれど……。


 とにかく、不良と関わるのなんて今日限りにしておきたいと思った。