生徒会室にこもるならお手伝いの意味ないだろ、って声が上がるかなと思っていただけに戸惑う。


 これは……驚かれてる?


「えっと……」

 続けて何を言えばいいのか分からなくてそのまま突っ立っていると、すみれ先輩が突然ガタンと大きな音を立てて椅子から立ち上がった。

 怖いくらい真剣な表情で近付いてきたすみれ先輩は、あたしの目の前に来た途端その表情をこれでもかというほど緩める。

「きゅわわわん!」

 そしていつも以上に勢いよくハグされた。


「ぅぐっ……す、すみれ先輩?」

「ウソでしょう⁉ 信じられない! 今までも可愛かったのに素顔はもっと可愛いとか! どうしましょう、もうこのまま離したくないわ!」

 なにやら大興奮されてしまった。

 でもずっと抱きつかれているのは動けないし困るから離しては欲しいです。


 すみれ先輩の様子にみんな呆気に取られていたけれど、ハッとした人たちが徐々に話始める。

「そ、そうだったんだ……」
「まあ、そういうことなら仕方ないよな」

 と、あたしが今日生徒会室にこもるのを許してくれるみたい。

 良かった。


「すみません……ありがとうございます」

 もう一度謝罪をして、お礼の言葉を笑顔で告げる。

『っ!』

 すると、男女問わず軽く驚いたように息を呑まれた。


「や、ヤバい。ドキッとした」
「え? あれ? 同性なのに、何だか凄くドキドキする」
「素敵……」

 何だか色々言われたけれど、あたしは「きゅわわん……」と呟きながらさらにきつく抱き締めてきたすみれ先輩から逃れようと必死で聞こえていなかった。

 やっとのことで離れてもらってから、坂本先輩が複雑な笑みを浮かべて言う。


「……美来さんって本当に、無差別に人をたらし込むよね……」

「……」

 無差別、なのかな?

 自分じゃ分からないから、何も言えなかった。