「あ、おはよう。……なんだ、奏くんも来たのか」

 早朝だというのに、そこにはすでに生徒会長である坂本先輩がいたから。

「やっぱり一緒に来て正解だったな……」

 ため息交じりに言う奏に、坂本先輩は「残念」と苦笑する。


「せっかく美来さんと二人きりになれるチャンスだと思ったのに」

「っ!? な、何する気だったんですか!?」

 思わず聞くと、一見優しそうに見える笑顔を向けられる。
 でも、その目にはちょっと妖しさが見え隠れしていた。


「そんなに警戒しなくても、泣かせるようなことはしないよ? 前も言った通り、口説こうと思ってただけだから」

「く、口説かれるつもりもありませんので!」

 丁重に拒否しておいた。


 泣かせるようなことはしないって言うくらいだから無理やりキスしてくることはないだろうけれど、この間のように逃げ出したくなるようなことはされる気がする。

 本当に奏がついて来てくれて良かった!
 ありがとう奏!

 心の中で奏に盛大に感謝する。


 そうして次に早かった高志くんが生徒会室に入って来るまで、あたしたちは三人で無難に今日のことを話して過ごした。