「あたしはただ……一般生徒にまで被害が出始めて、申し訳なくて……そうしたら坂本先輩に昨夜のことを提案されて……」

 言い訳じみてしまうかもしれないけれど、とにかく思っていたことと事実を話す。

「何事もなければあたしが出ることはなかったんだけど……」

 と、一度言葉を切って久保くんの左腕を見る。

 あのときの感情が蘇って来て、ギュッと眉を寄せた。


「スターターピストルとか爆竹の音でみんな冷静な判断が出来なくなって、刃物まで取り出して……」

 手を伸ばして、そっと彼の包帯に触れる。

「久保くんがケガをしてるのを見たら、もう止まれなかったんだ……」

「美来……?」

 少し戸惑った声に、あたしは顔を上げて困り笑顔を向ける。


「あたしの方から黙っててってお願いしてたのに、バレちゃうようなマネしちゃってごめんね……でも、止められて良かった……」

 久保くんに叱られても、その思いは変わらない。
 後悔はしていない。

「美来……」

 あたしの思いを少しは分かってくれたのか、久保くんは毒気を抜かれたように怒りを鎮めてくれた。


「いや、俺こそ怒鳴って悪かった。……抗争、止めてくれてありがとな」

「うん」

 お礼を受け取って、お互いに笑い合った。