でも、返ってきた言葉は――。

「……嫌だ」

「……え?」

 はじめ、なにを言われたのか分からなかった。

 でも、いつも一緒にいたからこそ、その一言に込められた意味にすぐ気づく。

 
 いつも同じものを見て、同じものを好きになって、それらを共有してきた。

 女を好きになるってことは今までなかったから、今回は今までとはちょっと違うかも知れないけど……。
 でも、つい昨日までは美来は俺らのだって一緒に言っていたはずだ。

 そう、俺“ら”のだって。


「明人? なんだよ、美来を俺たちのにしたくねぇの?」

 ドクドクと心臓が嫌な感じに鳴り響くのを無視して、非難するように聞き返す。

 なにが言いたいのか、分かっていたけれど問わずにはいられなかった。


「……ああ。俺“たち”の、は嫌だ」

 俺とそっくりな目が真っ直ぐ俺を見る。

「俺は、美来を俺“だけ”の美来にしたい」

 強い意志が込められた眼差しに、俺は言葉が出てこなかった。


 俺だけの美来にしたい。


 いつも一緒で、好きなものも同じで……いつもそれらを共有してきた。
 そうしてずっと一緒にいた。

 それが、崩れる。

 半身とも言える存在。
 ずっと、見ている方向も気持ちも同じだと思っていた。


 でも、初めてハッキリ違うと言われる。

 その事実に軽くめまいを覚えた。

 ……でも、同時に理解も出来てしまう。


 美来を欲しいと思う気持ちは、同じだから。