時刻はもう深夜といってもいい頃。

 俺はやっと帰ってこれた学生寮の自室で薬を塗っていた。


「いっつぅ……」

 数時間前まで行われていた抗争で一発左頬に食らってしまった。

 冷やしてるからそこまで腫れないだろうけど、少し口端を切ってしまったかも知れない。


「ちくしょう、あんな奴に殴られるとか……」

 俺を殴ったのは《月帝》でも中堅くらいのやつ。
 でも俺に比べたらケンカは弱かったはずだ。

 乱闘状態だからたまたま当たったってだけ。

 それに殴られた後すぐに殴り返してやって、相手はぶっ倒れたから良いけどな。


 だとしても格下に殴られたってのはやっぱりムカつく。


 そんな風に思い返していると、ガチャッとバスルームのドアが開く音がした。

 俺の後に入ってた明人が出てきたんだろう。


 それぞれ別の部屋は用意されてるけど、俺達の部屋は他の一般生徒より少し大きめに出来てる。

 だから俺と明人はいつも寝るとき以外はどちらかの部屋で過ごしていた。


 生まれたときからずっと一緒で、そうするのは自然なこと。

 疑問も抱かずいつまでも一緒。


 そう信じて疑わなかった。

 今日、この時までは。