今度こそはと思っていたのに、街に《かぐや姫》が現れる事態になった。

 この二年どんなに探しても見つからなかった《かぐや姫》が。


 たまたまってこともあったけれど、また邪魔をされそうな予感はした。

 何でこのタイミングで現れるんだ!


 もう準備は進めていたから、今更やめるわけにもいかない。

 それに、本当に邪魔されるかは当日になってからじゃないと分からない。

 このまま計画通りに進めるしかなかった。


 その結果がこれだ。

 念のためと、混乱を煽るためにスターターピストルや爆竹を用意したが……。


 二年前以上に力強い歌声にその混乱も奪われた。

 小柄なのに目を惹きつけられるその姿に、みんなが注目した。

 月に向かって歌う姿はまさに《かぐや姫》の様で……。


 その存在を知らなかった今の1、2年生はこう思っただろう。


『聞いていた《かぐや姫》とは、彼女のことなんだな』


 ……と。

 だから、すぐにその名前が出てきた。


 それは波紋のように広がって、一つの塊のように彼女を求める。


 二年前と同じだ。

 彼女の姿を目にして、その歌声を聞いた奴らはみんな彼女に惹かれた。


 それは……そう、この俺も例外じゃない。