面白いものが見られるかもしれないと言われても別に期待してなかった。

 それでも来たのはただヒマだったから。


 案の定スターターピストルやら爆竹やらの子供騙しで混乱を引き寄せただけだった。

 ナイフを潜ませていたのは良かったかも知れないが、聞いた話じゃあ二年前と同じ手口。

 芸がない上に詰めが甘い。
 二年前と同じ人物が策略したと言ってるようなものだ。


 だから、呆れと嘲笑を持って見学していたんだが……。


 はじめは、突然の叫び声にただ驚いた。

 そうして声の主に視線を向けると、あの可愛いけどお子様な女がいた。


 なんだ? と思った次の瞬間に紡がれた旋律。

 力強い声音。

 声に宿った、止まれという単純にして明快な思い。


 それだけでもゾクゾクしたのに、月を睨み上げたあの表情。

 目を潤ませながらも強く睨みつけるあの表情に、ドクリと心が動いた。


 その高揚が今でも俺の中に残っている。


「……成長してから、と思ってたんだけどな……」

 キスだけで泣くようなお子様。

 もう数年。
 大学生くらいになってもう少し大人になってから食ってやろうと思ってた。

 お子様だからいらないと切り捨てるにはもったいない容姿と体。

 でも、お子様を抱くのは面倒だから勝手に育つのを待つことにした。


 だが……。