元々目をつけられていたのはあたし。

 ちょこちょこと素顔を見られてしまったのもあたし。

 無自覚でも人をたらし込んできたのもあたし。


 そう並べ立てられて、最後に一言。

「お前がもっと気を付けていればこんな大げさなことにはならなかったんじゃないか?」

「うぐっ!」

 言い返せなかった。


 不本意な部分もあるけど、確かな事実で……。

 なにより、奏には全く悪いところはない。

 むしろフォローしてくれてたくらいだ。


「うぅぅ……だってぇ……」

 あたしだって進んでトラブルを引き寄せてるわけじゃないのに……。


 そうして項垂れたあたしの頭に奏はポンと男らしく硬くなってきた手を置いた。

「ま、出来る限りはフォローしてやるから」

「うん……」

 なんだかんだ言っても助けてくれようとする奏に、申し訳ないと思いつつ感謝した。


「ありがとね、奏」

「ま、お前の兄だからな」

 そうしてあたし達は、今夜だけでもと残りの夜を静かに過ごした。




 久保くんは大丈夫だったかな?

 と、少しの心配を残して――。