地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~

「ああああぁぁぁぁ!!!」

 感情のすべてを吐き出すように、ただ叫んだ。


 嫌だ、嫌だ!

 どうして?

 何で久保くんがケガをしてるの?


 混乱してナイフを持っていた人が暴れたんだっていうのは分かっていたけれど、分かりたくなかった。

 あたしはまるで癇癪を起した小さな子供みたいに、ただ感情のまま叫ぶ。


 息が切れるまで吐き出すと、大きく息を吸う。

 そのタイミングを見計らって奏がスピーカーのスイッチを付けたんだろう。

 次に出した声が、ステージの脇にある大きなスピーカーから流れていった。


 歌うのはやっぱり二年前と同じ歌。

 紡ぐ言葉は争いを悲しむもの。
 愛を願う言の葉。

 でも、今のあたしはそんな優しい感情だけではいられなかった。

 争いを悲しむ?
 ううん、むしろ憎しみに近い。

 愛を願う?
 ううん、とにかくやめてとしか思えない。


 震える感情は涙となって出てきそうで、あたしは泣かない様に空を見た。

 暗闇の中、煌々と光る満月を。


 止めて。

 この争いを止めて。

 そんなに大きく光って見渡しているだけなら意味がない。

 その高い位置から、争いをやめろと訴えかけて。


 そんな風に、あたしは空に静かに浮かぶ月を睨むように見上げて歌った。