その瞬間緊迫した雰囲気が霧散する。

 そのことにホッと息をつくと、二人も教室の中に入ってきた。


「……早く帰った方がいいぜ、美来。もうほとんどの生徒は寮に帰ったみてぇだし」

 ピリついた雰囲気はなくなっても、僅かに不満そうな色を残して明人くんが近づきながら言う。


 ああ、そっか。

 どうしてピリついてるのかと思ったけど、双子と久保くんはこれから抗争で敵対するからなんだ……。


 普段も仲が良いとは言えないけれど、それでも同じ学校の同級生として普通に過ごしていたのに……。

 これで《月帝》と《星劉》が和解出来なかったら、ずっとこんなピリピリした雰囲気になるんだろうか?

 いや、もっとひどい状況になる気がする。


 ちゃんと和解出来るといいな。

 ……それに。


 三人を見返しながら思う。


 それに、単純にケガをしてほしくない。

 抗争だから、つまりはケンカをするんだよね。二年前みたいに。

 発散させるためっていうのが目的みたいだから、殴り合いはどうしたってしちゃうんだろう。


 せめて大けがにならないようにと願うばかり。

 気を付けて、と言いたいけれど……。


「美来?」
「おい、どうしたんだ?」

 不思議そうにあたしを見る双子。