「聞いたよ。銀星にキスされて泣いちゃったんだって?」

「ぅえ!?」


 誰から聞いたの!?

 ってやっぱり銀星さん本人?

 なんか知り合いみたいだったし……。


 と思ったけれど、ちょっと違ったらしい。


「この店出た後のことなら連から大体聞いてるよ」

「連?」

 って、誰だっけ?


「西木戸 連。《crime》の副総長で、前髪の一部赤くしてるやつ。……会ったんだよね?」

「ああ!」

 そこまで聞いて思い出す。


 あの日、なんだかんだで二回会ったしチャラい感じが印象的だったし、忘れてはいない。

 でも確か苗字しか聞いてなかったから、名前だけだと分からなかったんだ。


「連さんっていうのね、あの人」

「そ。……銀星が服を買ってあげるのって抱く気満々の相手なんだよね。てっきり美来も同意済みなのかと思ってたんだけど……ごめんね、あのときそこも教えておけば良かった」

「そんな! 仕方ないよ、急いでたんだし」

 申し訳なさそうに言われて気にしないでと話す。


 でも良かった。

 遥華のタイプなら『キスくらいで泣いちゃうの?』とか言うかもって身構えてたから。

 思っていた以上に遥華が良い子で安心した。

 同時に疑ったことをちょっと恥じる。