いや、でもそれならそれで私服で良くない?

 そうは思うんだけれど、張り切ってウキウキしているしのぶを見るとそれ以上何も言えなかった。


「まあ、無理だけはしないでね」

 とだけ伝えておく。


 で、その衣装を作るための材料などの調達をするため今は街に買い物に来ているところだ。

 だからあたしは丁度いいと思ってとある場所に寄ってもらうことにする。


「ええと……あ、いた」

 目当ての人物を探し当てて近づいて行く。


「遥華」

「はい? えっと……どなたですか?」

 バイト中の遥華はあたしを見て戸惑いを見せた。

 その様子を見てあたしは慌てて眼鏡を取る。

「あたしあたし! 美来だよ」

「え!? なにそれ、もしかしていつもはそんな格好してるの!?」

 遥華は驚き、そしておかしそうに笑いながら近付いて来る。


「ホント面白いね、美来って。で、今日はどうしたの?」

「うん、今日はちょっと街に用事があって……せっかくだから遥華に会えればと思って」

 シフトが入ってなかったらどうしようと思ったけれど、いてくれて良かった。


「それと、その……この間の服の代金やっぱり支払っておこうと思って……」

 今更な感じがして気まずかったけれど、遥華は「ああ……」と困り笑顔を浮かべて何やら納得してくれた。