地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~

「は? え? ちょっ!? な、泣くのか?」

「ご、ごめっ……止まらなくてっ」

「あああ、えっと……ちょっと玄関まで入るぞ!?」

 慌てた久保くんは、そう断りを入れてからあたしごと部屋の中に入って来る。

 でも自分で言った通り玄関より先には行かない。


 前までの久保くんなら身の危険を感じるところだっただろう。

 でも、どうしてかな?

 今は逆に安心できてしまう。


 それがまた、涙腺を締められない原因になってしまっているけれど。


「どうした? ケーキ嫌だったか? それか俺なんかしたか?」

 焦りを隠しもせずに次々質問してくる久保くん。

 そりゃそうだ。

 好意でケーキを渡したら突然泣かれてしまったって状況。
 立場が逆なら、あたしだって焦って質問攻めにしちゃうと思う。


「っちがっ、嫌とかじゃなくて……」

 しゃくりあげそうになる喉に力を入れて、何とか誤解だけはさせない様にと話す。


「久保くんが、優しいから……。何か、あふれてきちゃって……」

「美来……」

「いきなり泣いてごめんね? はは、おかしいな。奏としのぶの前でも我慢出来たのに……一回久保くんの前で思い切り泣いちゃったからかな? ――っ」

 一通り話し終えると、また雫があふれてきてしまう。