しのぶは文化祭の準備大丈夫なの? って聞いたら……。
「奏に美来を頼まれてるし、良いの」
なんて答えになってるんだかなってないんだか、という言葉を胸を張って口にした。
わざとらしいくらいのその仕草に思わず笑ったりして、沈んでいた心も浮上していく。
夕食時には奏も合流して、食べ終えたら二人で第二学生寮に帰る。
その頃にはだいぶ落ち着いていて、髪を切られたショックや悲しみはなくなったと思っていた。
……思っていたんだ、夜の七時を過ぎたころにあたしの部屋のインターフォンがなるまでは。
ピンポーン
誰だろ?
奏かな?
そう思って誰か確認することなくあたしはドアを開ける。
「奏? どうしたの?」
なんて言いながら開けたドアの先にいたのは奏じゃなくて――。
「なっ!? お前ちゃんと確認してからドア開けろよ。不用心すぎ」
驚いた顔をした久保くんだった。
「え? あ、ごめん。奏かと思って……どうしたの?」
いくら部屋が近くても用事もないのに訪ねてきたりはしない。
夜にわざわざ久保くんがくることも珍しいなと思いながら聞いた。
「……これ」
何かを言いたそうな顔をしながらも、まずは手に持っていた箱を差し出してくる久保くん。



