地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~

「ごめん美来。……目立たないってことはないかも……」

 鏡がないから自分じゃあちゃんと確認出来ないけれど、丁度顔の横部分が切れているらしかった。

 丁度顎の辺りまでの長さ。


「……これじゃあ不格好だね」

「うーん……美来さえ良ければ反対側あたしが切っても良い? 寮の部屋に行けば散髪用のハサミあるし」

 しのぶの提案に少し迷う。


 ちゃんと切って整えてもらうなら理容室とかに行った方が良いだろう。

 でも、切られた側とそろえるためだけに理容室に行ってお金を払うのもちょっと……。


 最近色々と出費もあったから、節約できるところは節約したい。


「お願いしても良いんじゃないか? しのぶ結構器用だし」

 うーんと悩んでいると奏が後押ししてくれる。

「生徒会の方とかには俺から知らせておくから、今日くらいはそのまま早く寮に帰れば良いんじゃないか?」

 奏にそこまで後押しされたら断る理由もない。


 あたしはしのぶに「じゃあお願い」と伝えて、奏を空き教室に残して第一寮へ向かう。


「……しのぶでも泣き場所にはなれなかったか。……いや、俺がいたからか? でも……」

 空き教室を出る直前、奏のそんな呟きが聞こえたけれどどういうことなのか分からなかった。