地味同盟～かぐや姫はイケメン達から逃れたい～

『カラスの濡れ羽色って言うんだ。一番きれいな黒髪なんだぞ？』

　そう言ってくれたのはおじいちゃんだったかな？

　あたしはその言葉に得意げになって、よく『撫でさせてあげる！』なんて言っていたっけ。


　でも、顔のつくりと違って髪はちゃんと手入れしないとすぐに傷んでしまう。

　中学に入ってすぐのころに枝毛を発見したときは地味にショックだった。


　それからは頑張って維持し続けたから今も綺麗だと言ってもらえる髪になってる。

　自分で努力して維持しているものだから、こんな風に無造作に切られると悲しくなるんだ……。



「……」

　何とも言えない重めの沈黙が落ちる。

　その沈黙を破ったのは優し気なしのぶの声だった。


「……とりあえず、髪解いてみよう？　あまり目立たないかもしれないし」

「……うん」

　このままでいるわけにもいかないし、一度解いてみないことにはどこの部分を切られたのか良く分からない。

　素直にしのぶの言葉に従ったあたしは、解くとともに落ちていく切られた髪を見て喉にグッと力を込めた。


　泣かない。
　泣いちゃダメだ。


　なんとか耐えながらすべての髪を解くと、しのぶの眉間にしわが寄る。