全力でとか言ってる辺りある意味強引なのかも知れないけど……。

 いや、まずはそれよりも。


「口説く、ですか?」

「そうだよ? ……ああ、それとも――」

 テーブルについていた坂本先輩の節ばった手があたしの顎に触れる。

 何をされるのかと身構えていると親指の腹で唇を撫でられた。


「二年前みたいに、キスした方が良かった?」

「っ!」

 妖しい眼差しに絡めとられる。

 その妖艶さは、二年前より拍車がかかっている様に見えた。


 二年前同様動けないでいると、パッと顎から手が離される。

 もしかしたらまたキスされてしまうんじゃないかと身構えていたあたしは少し拍子抜けした。


 いや、キスされなくて良かったんだけどね。


「キスはしたいけど、今はしないよ。二年前は君のことが知りたくて、逃がしたくなくて焦ってあんな風にしたけれど……今度はちゃんと口説いてからにしたい。泣かせたくはないしね」

 と、この間の街でのことも出して説明される。


 それにしても……。

 八神さんといい如月さんといい。

 泣かせたくないって言われるのはこの間街で銀星さんに泣かされたからだよね?


 それでキスとかされずに済むのは良いけれど、こう何度も指摘されると恥ずかしくなってくるというか……。