「前からカンの鋭い司狼が気にかけていたからもしかしてとは思っていたけれど、街で会って確信したよ。……やっと見つけた、《かぐや姫》の美来さん」

 妖艶な眼差しで覗き込まれ、二年前の記憶がフラッシュバックする。


 そうだ。
 この坂本という先輩は、本来こんな目をする人だった。


 優し気で王子様のような雰囲気を出している普段の坂本先輩。

 時折黒っぽい感じもあるけれど、二年前同様のこんな眼差しはあまり出してこなかった。


 それが、今はためらいもなくさらしている。

 そのことがあたしの正体を確信している証にも見えて……。


 誤魔化すのは無理だと思った。


「……それを知って、どうするんですか?」

 バレてしまっているなら変に誤魔化し続けても意味がない。

 そう判断したあたしは坂本先輩の出方を伺った。


「そうだね……全力で口説くかな?」

「はい?」

 少し考えるように視線を横にずらしたと思ったら、すぐに戻して目を細める。

 そうして口にした答えに、あたしは緊張感のない声で聞き返した。


 いやだって、八神さん達にもバラすとか、二年前同様もっと強引に迫ってくるとかするのかと思ったから……。