ちょっと高志くん!?
 もっと粘ってよ!


 驚愕の表情で彼を見ると、申し訳なさそうな顔が合わせられる。

 すまない! 早めに戻ってくるから!

 彼の目はそう語っていた。


 いや、そう思うなら粘ってってば!


 あたしの訴えは届かなかったのか、彼は急いで生徒会室を出て行ってしまう。


 少し呆然と高志くんがいなくなったドアの方を見ていると、「ふぅ……」と息を吐く音が聞こえた。

 その音を出した坂本先輩はガタリと椅子を鳴らして立ち上がり、あたしに近づいて来る。


「全く、二人きりにさせない様にしてるのバレバレなんだから……」

 妖し気な雰囲気を(かも)し出しながら、目の前のテーブルに片手をつき彼はあたしの顔を覗き込んできた。

「ね? 《かぐや姫》?」

「っ!?」


 こ、これはバレてる?

 ううん、当てずっぽうで言ったって可能性も……。


「ああ、変に誤魔化さなくていいからね? この間街で会ったとき、服も変えて変装してたみたいだけど靴とバッグは同じだっただろう?」

「っ!!?」

 指摘されてしまった、と思う。

 いくらなんでもそこまで見られてるとは思わなかったから……盲点だった。