……如月さんって、もしかしなくても髪フェチなのかな?

 思えば二年前、初めて会った時も髪を触られていた気がする。


 ってことはあたしの髪を触るのが癒しってこと?


 多分そうなんだろうなと納得しつつも、でも何であたしが髪を触らせてあげなきゃならないの? という疑問もわいてくる。

「んっ……」

 髪を手櫛で梳かれるたび、大きな手で撫でられるたび。

「ぅん……」

 何だか恥ずかしい気持ちになってくる。

「っん」

「……」

 数回髪を撫でられたと思ったら、何故か突然ピタリと如月さんの手が止まった。


 止まってくれるのはありがたいけど、突然だったからどうしたのかと思う。

 もう終わりってことで良いんだろうか?


「如月さん?」

 一応動かないままで問いかけると、耳元で「はぁ……」と重いため息を吐かれた。


「美来……あんまり色っぽい声出すと……襲うぞ?」

「はい!?」

 突然の危ない発言に思わず距離を取るように腰を浮かせる。

 同時に見た如月さんの表情は不機嫌そうなもの。

 でもその目には少し欲望のようなものが見えた気がして……。


 あ、これ逃げないとダメなやつだ。


 瞬時に判断した。


「書類、置いときますね」

 すぐにそう言って、一時ひざの上に乗せていた書類を座っていた椅子に置き立ち上がる。