「正直な話、美来さんが手伝いに来てくれて本当に助かるわ」

 そう言ったすみれ先輩は優しく微笑みつつも、その目には必死さが表れていた。

 本当に去年までは悲惨だったんだろうな。


 手伝うことであたしにもメリットは一応あるし、すみれ先輩達の力になれているなら頑張ろうと思った。

***

「え? これを北校舎の第二音楽室に?」

 渡された書類をどこに持っていくのか聞かされて、思わず聞き返した。


 だって、北校舎の第二音楽室と言えば《月帝》のたまり場になっている場所だ。

 聞き間違い? って思うのが普通だと思う。


「ああ。それと、こっちを理科準備室にお願いするよ」

「……」

 しかも確か聞いたところによると、理科準備室は《星劉》のたまり場だったはず。


「えっと……間違ってはいないですよね?」

 言い間違えるなんてことはないと思うけれど、どうしても信じられなくて書類を渡してきた坂本先輩に質問していた。


「ああ、間違ってはいないよ。本当は君にはあの二人とあまり会わせたくないんだけれど……人手が足りない上に結構急ぎなんだよね、その書類」

「そ、そうですか……」


 あたしも《あの二人》とやらには出来る限り会いたくないんですけどね!


 と思うけど、急ぎだというのなら仕方ない。
 サッと行ってサッと置いて来るしかないか。