みんなはそんな高志くんを放っておいてあたしを見た。

 代表するように、奏が口を開く。


「美来、とりあえず髪解いて眼鏡取れ。見せた方が早いからな」
「え?……まあ、奏が良いって言うなら良いんだけど……」

 あたしに地味な格好をしろと言った張本人が良いって言うんだ。
 問題はないってことだろう。

 それに、確かに見せた方が早いとあたしも思ったから。


 だから、あたしは両方のおさげを解き眼鏡を取る。
 軽く頭を振ると、きつい三つ編みだった髪がサラリとストレートになった。

 目を見開いてあたしを凝視する高志くん。

 そのまま固まってる彼に、あたしは控えめに微笑んだ。


 うっすら開いた唇が「《かぐや姫》?」と動くのを見た。

「えっと……うん、何かそう呼ばれてるみたいだね」

 高志くんの驚きの表情がカァッと赤くなっていく。


 あれ? もしかして怒っちゃった?


「あ、怒った? その、だますつもりじゃなかったんだよ? ごめんね?」

 一応それだけは伝えておく。
 でも、高志くんは赤い顔のまま首を横に振り「違う」とくぐもるような声で言った。

「怒ってはいないから、気にするな。これはその……ビックリしただけだ、多分」

 そう言ってくれたあとも「何でこんなに熱いんだ?」とかぶつぶつ呟いていたけれど、とりあえず結果的にだましてしまっていたことを怒ってはいない様で安心した。